ドイツ発祥のヴァイツェンとはどんなビール?
「ヴァイツェン」は、 14世紀頃から南ドイツのバイエルンで造られていた伝統的なビール。その名前はドイツ語で小麦のことを意味し、その名の通り小麦麦芽が使われています。通常、ビールには大麦を発芽させたものを原料としますが、ヴァイツェンは小麦麦芽が50%以上使われています。
ヴァイツェン発祥の地であるバイエルンでは、「ヴァイスビア」と呼ばれることがあります。これは、ドイツ語でヴァイス(weisw=白)ビア(bier=ビール)で白ビールという意味。また、英語ではホワイトビールや小麦(Wheat)からウィートビールとも呼ばれることもあります。
貴族のビールとも呼ばれるヴァイツェン
ヴァイツェンの発祥地であるバイエルンと言えば、有名なのが「ビールは大麦、ホップ、水のみを原料とすべし」という内容で知られている「ビール純粋令」です。ビール純粋令は、1514年にバイエルン公国のヴィルヘルム4世が制定した世界で最も古い食品に関する法律です。
当時、この法律がつくられた目的のひとつは、ビールの品質向上でした。現在バイエルンのビールが高品質なものとして知られているのは、この法律によるところが多いようです。そしてもうひとつの目的が、食料の確保。パンの原料となる貴重な小麦の、ビールへの使用を制限するためでした。
しかし、宮廷の醸造所や一部の修道院には、例外的に小麦を使ったビールの製造を認めたため、貴族や富裕層は莫大な利益を上げたそうです。そのためヴァイツェンは「貴族のビール」とも呼ばれています。現存する世界最古の醸造所と言われる「ヴァイエンシュテファン醸造所」も、もともとは修道院の醸造所でした。

ヴァイツェンは上面発酵のエールビール
ビールは、麦やホップなどから作られる麦汁の糖類を酵母が分解して、炭酸ガスとアルコールを生成する発酵によってつくられます。発酵には、使用する酵母の種類によって「上面発酵」と「下面発酵」があり、発酵の仕方によってビールの種類が異なります。
詳しくは後ほど解説しますが、ヴァイツェンは上面発酵酵母であるヴァイツェン酵母によってつくられたエールビールです。
バナナの香り?ヴァイツェンの味わいや特徴

ヴァイツェンの味わいの特徴は、バナナを感じさせるフルーティーな甘い香りとクローブのようなスパイシーな香り。これは、ヴァイツェン酵母によって作り出されます。これら酵母から生まれる香りのことを、エステル香ともいいます。
ヴァイツェンにはいくつか種類がありますが、そのほとんどでバナナの香りを感じることができます。クローブの香りは、バナナの香りに比べると少し控えめ。
クローブはバニラのような甘さと爽やかなスパイシーさを持ち合わせたスパイスの一種です。また、口当たりがなめらかですっきりしているため、女性に人気とされています。