起源はマヤ・アステカ文明。カカオ豆の歴史
カカオ豆は、英語で「Cocoa beans」といい、学名はTheobroma cacao(テオブロマ・カカオ)です。Theobromaはギリシャ語で、「神 (theos)の食べ物 (broma)」を意味しています。
カカオ豆の起源は中南米

カカオ豆の歴史は古く、その起源は現在の中南米にあたる地域で栄えた、古代マヤ文明やアステカ文明までさかのぼります。アステカに伝わる神話では、文化神・農耕神のケツァルコアトルが、トウモロコシと一緒にカカオ豆を人間に与えたといわれています。
アステカ人の社会では、カカオ豆は非常に貴重で神秘な力を持つものとして大切にされ、王族や貴族、上流階級の人などだけが利用できるもので、宗教儀式で神様への供物とされる他、通貨としても使用されていたそうです。
また、その頃からすでに疲労回復や滋養強壮、精神高揚などの効能が知れらており、カカオ豆を薬草に混ぜて薬としても使っていたようです。
現在のカカオ豆の生産地と生産量
当時、カカオ豆がこれほどまでに貴重なものとして扱われていたのは、産地が限られていて簡単に入手できなかったからです。しかし、16世紀に中南米で始まったカカオ豆の栽培は、その後アフリカやアジアに広がって行きました。
現在のカカオ豆の主要な生産国と生産量は次の通りです。

※資料:国際ココア機関(ICCO)カカオ統計2018/19第3刊
カカオ豆の多様な品種

カカオ豆には、多くの品種がありますが大きく次の3つの系統に分けられます。
クリオロ種(CRIOLLO)
スペイン語で「原産地、自国の」という意味を表しているクリオロ種(Criollo)。豆の形状は細長くて、ふっくらとした形をしています。独特で繊細な香りから、フレーバービーンズとも呼ばれ、アステカの皇帝モンテスマやヨーロッパの貴族たちに好まれていたそうです。
古代から栽培されていたクリオロ種ですが、病気や害虫に弱く栽培が難しいため、現在栽培されているのは、中米のベネズエラやメキシコ、アジアの一部といったごくわずかな地域だけです。その生産量はカカオ豆全体の約3%程度で、市場では「幻のカカオ」と呼ばれるほど希少な品種です。
フォラステロ種(FORASTERO)
ベネズエラでは、自国で元々栽培していた品種以外のカカオ豆を、「よそ者の」と名付けたことから、スペイン語でアウトサイダーを意味する「フォラステロ(Forastero)」という品種名となったそうです。病気や害虫に強く、成長も早いため栽培しやすいのが特徴です。
現在、西アフリカや東南アジア・南米アマゾン川流域など広く栽培されていて、生産量はカカオ豆全体の約85%を占めています。
トリニタリオ種(TRINITARIO)
トリニタリオ種は、クリオロ種とフォラステロ種を交配させて育成した品種で、カリブ海に浮かぶトリニダード島で作られたことから名づけられました。フォラステロ種の育てやすさと、クリオロ種の繊細な香りの2つの品種の良い特徴を受け継いでいます。
ベネズエラやトリニダード・トバゴといった中南米の国をはじめ、スリランカ・インドネシアなどのアジア地域でも栽培され、生産量はカカオ豆全体の約10~15%です。
カカオとコーヒー豆の違いとは?

コーヒーとの相性がよいことでも知られるカカオ豆。それぞれカカオ豆はアオイ科カカオ属で、コーヒー豆はアカネ科のコーヒーノキという、全く違う植物から採取される豆です。
栽培されているのはどちらも赤道を挟んだ熱帯にあたる地域で、コーヒー豆が主に栽培されている地域を「コーヒーベルト」、カカオ豆が栽培されている地域を「カカオベルト」と呼びます。この2つはほぼ同じエリアで、どちらも豆を焙煎して利用するという共通点があります。
価格は国際相場の動向に連動
カカオ豆は、金や銀、プラチナなどの貴金属や石油、コーヒー豆などと同様に、ニューヨークとロンドンの商品先物取引市場で取引が行われ、国際相場が決まります。ロンドン市場では主に西アフリカ産のカカオ豆が取引され、ニューヨーク市場では中南米産のカカオ豆が主に取引されています。
国際相場は、カカオ豆産地の天候(降雨、気温など)や作柄、病害虫の被害、政治や治安の状況、消費状況や投機資金の流入など、さまざまな条件によって毎日変動しています。