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山口 祐加

フリーランスフードライター / プランナー

両親共働きで、母親に「ゆかが料理を作らないと晩御飯ないよ」と笑顔でおどされ、
7歳のときに料理に目覚める。出版社とPR会社を経て独立。
現在はWEBメディアを中心に執筆を行う傍ら、社食を開くなど食に関するイベント多数も行う。

キッチンブラザーズをご利用のみなさま、はじめまして!
フードライターの山口祐加です。

好きなことは「料理」と「食べ歩き」で、暇さえあれば頭のなかはごはんのことばかり。
おいしいものに出会いたい一心で年間200軒の新規開拓を目標に食べ歩いています。

さて、いろいろな店を訪れているうちに「もう一度行きたい!」と心を掴まれる店には、営業時間が短い、店主がマニアックすぎる、毎日試作するなど「ひとひねり」した特徴があることに気づきました。この連載では、その特徴をテーマ別にご紹介していきたいと思います。

ご自身でお店を営まれているまたは、これからお店を始めたいと思われているみなさんにとって、お店をより楽しく、面白くするヒントをお渡しできれば幸いです。どうぞよろしくお願いします!

第一回「相手に合わせる店」

築地市場のなかにある「珈琲の店 愛養」は、築地で働く人たちや、築地を訪れる料理人から愛され続ける店です。近頃はその評判を聞きつけて、いちげんさんや外国人観光客も訪れるのだとか。

店のメニューはコーヒー類とソフトドリンク、トーストなど至ってシンプル。
けれど、この「トースト」が店いちばんの魅力。

愛養の店主・鈴木さんが焼くトーストは、焼き加減をどうするか、四つ切りか八つ切りか、ジャムかバターまたはどちらもか、耳を落とすのか残すのか……。
これらを組み合わせ、お客の好みにそってオーダーメイドで作られているというからすごい。

しかもトーストは焼いてバターなどを塗るだけでなく、二枚組み合わせた「トーストサンドイッチ」、築地で働く人が手のにおいを気にせずに食べられるようつまようじ刺した「ひとくちトースト」など、バラエティは無限大。

しかも鈴木さんは常連の好みを覚えていて、席に座るだけでパーフェクトなトーストが目の前に運ばれてくる。きっとそれはとても気持ちが良い「当たり前」ではないでしょうか。

きっと鈴木さんも最初から「お客の好みに合わせて変幻自在にトーストを焼こう」と店を始めたわけではないと思います。毎日お客と顔を合わせるうちに、わがままを言っても良い関係性が生まれ、好みに合わせてトーストを焼いてくれると築地内でうわさが広まり、「じゃあ俺も」と数々のマイトーストが生み出されていった。

愛養に通う人全員のマイトーストを覚えることは容易くないにも関わらず、「河岸では、それができなくちゃ、つとまらないですよ(dancyu 2018年4月号、p.22より)」と鈴木さんはおっしゃいます。

店主が自分の顔と一緒にマイトーストを覚えていてくれる。おいしい以外に「うれしい」も一緒に味わえる。その大きな愛情に、やっぱり常連になる店には理由があるなと思うのです。

先日、私もようやく愛養に行くことができました(お店が13:30閉店で、なかなかたどり着けなかったのです……)。

店に入ると、年季の入ったカウンターの中にいらっしゃる鈴木さんが朗らかに声をかけてくれました。
アイスミルクコーヒーと、初めての方におすすめですという八つ切りジャム&バターのトーストを注文。店内を眺めているうちにコーヒーとトーストが到着。

キンと冷えたコーヒーと、バターとジャムたっぷりのトーストをひとくち。絶妙な焼き加減に思わず笑みが溢れました。小さいサイズのトーストは、あれよあれよという間に完食。飲むようにトーストを食べた初めての体験。私も焼き加減や切り方などをいろいろ試して、私もお気に入りのマイトーストを見つけてみたい。つまりお店の常連になりたい、と心底思いました。

型の決まったトーストではなく、お客に合わせてアレンジするトーストを発明したことでお客と愛養の距離はぐっと近くなったはずです。

お店側にお客が関われる余白があると、自分の場所を見つけたような気がしてうれしくなるのは私だけではないはず。

きっとそれが店に通う理由になるのです。

最後に悲しいことは言いたくないのですが、愛養は築地市場の移転に伴い今年の10月6日で営業を終え、豊洲では業態を変えて営業するそう。

つまり、愛養のトーストはあと2ヶ月も経たないうちに食べられなくなってしまう。
それまでにぜひ、トーストの名手に会いに行ってみてください!

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