盛岡発、世界水準の情熱と探求心。‐NAGASAWA COFFEE- | KITCHEN BROTHERS(キッチンブラザーズ)

盛岡発、世界水準の情熱と探求心。‐NAGASAWA COFFEE-

お店紹介
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東京から東北新幹線で約2時間、ひんやりとした空気を感じられる岩手の玄関口、盛岡へ。駅から歩いて岩手山が望める開運橋を抜け、近隣の人たちが行きかう通りを進んだ一角にお店を構えているNAGASAWA COFFEE。

大きなガラス張りの窓からは、ビンテージの焙煎機が存在感を放つ洗練された空間とコーヒーを求めて来たお客さんで賑わっている様子がうかがえます。またロースターとしての評価も高く、その範囲は地元の東北のみならず、全国のカフェや飲食店でもNAGASAWA COFFEEの豆を求める声が多く聞かれるほど、コーヒー業界で親しまれています。

オーナーの長澤 一浩さんは、昨年アメリカ・ポートランドに拠点を置く世界的なコーヒーメディアSPRUDGE(スプラッジ)が選出する「コーヒーの仕事を通じて世界を変えている20人(The Sprudge Twenty)」に日本人として唯一選出された、東北を代表するスペシャルティコーヒーの第一人者。自身が足を運び学んだ世界のコーヒー文化や知識を、地元・盛岡から日々発信し続けています。

今回は、お店で淹れたてのコーヒーをいただきながら、オープンまでの経緯やお店への想い・こだわり、どんなところが支持され、人を惹きつけているのか、などをお聞きしました。

 

 

一人ひとりに寄り添うコーヒーを。

開業されて今年で9年目となりますが、長澤さんはなぜコーヒーロースターを目指されたのでしょうか?

 

初めはスノーボードで食べていきたくて、それを軸足に様々な仕事をしていたんです。その時期に出会ったものの一つがコーヒーだったのですが、まだ趣味としてたしなむくらいでした。その後、努力はしたもののスノーボードは一部のプロだけしか食べていけない厳しい世界で、それだけで生計を立てるのが難しく、次第にライフスタイルの一環となっていきました。

そうしてプロとしての道を諦めかけた頃、競技としてではなく自然の山を滑るバックカントリーにハマっていったんです。よく冬山に登り滑っていたのですが、そのときに休みながら飲むコーヒーが何物にも代えがたいくらい美味しくて。そこでまた目覚めだしたというか、いずれはコーヒー屋をやりたいなと思うようになったんです。

オーナー・長澤 一浩さん
オーダーが立て込んでも、慣れた様子で小気味よくハンドドリップをする長澤さん。希少な豆やオリジナルカップを求めるお客様にも、一つ一つ丁寧にご説明をされていました。

 

コーヒーの魅力にあらためて気付かれたのですね。それから、どのように開業されたのでしょうか?

 

他の仕事をしながら、夜な夜な手網焙煎をすることから始めました。ネットで取り寄せたり、盛岡市内のコーヒー屋で買った豆を使って、「自分でやったらどういう風になるんだろう」という探求心で試したんです。
それから娘が生まれたことが転機で、家族といる時間を増やすために自営業にしようと思い、本気でコーヒー屋を目指そうと思ったんです。ただどこかで修行していたわけでもなかったので、失敗しないようにすごく準備期間を設けましたね。

最初は、業務用の焙煎機に触れたこともなかったのですが、まず3kgのものを買いました。それくらいの規模になれないとコーヒーの世界でやっていけないと思って、焙煎機を置くためのプレハブも自宅の庭に立てたんです。焙煎の理屈も何もわかっていなかったので、自分でデータを取りながら試したり、東京でやっているセミナーにも行ってみたりしましたね。そうして、うまく焙煎できるようになるまでに5年くらいかかりました。

その間にも、通販での豆の販売や催事出店をしていてサラリーマンとの二足の草鞋状態だったのですが、2010年には「他に負けない焙煎ができる」という自信がついたので開店準備を始めたんです。

 

準備に準備を重ねて、ようやく開店準備に取り掛かったのですね。

 

融資の話もまとまり、あとは3日後、契約書にサインするだけというときに東日本大震災が起こってしまって。すべてが白紙となり、これからどうすればいいんだろうと思っていたのですが、「自分にはコーヒーがある。何かできることはないか」と考えました。

幸いにも、盛岡は地震の被害はあっても津波の被害はなかったのですが、直後の被災地は食べ物や飲み物を確保するのに大変でそれどころではなくて。
ようやく物資が供給されるようになった1か月経った頃、食料を確保できた後に必要なのはやっぱりホッとできることかなと思って、コーヒーを淹れに避難所を回りました。そこで「コーヒーが飲みたかったんだ」ってすごく喜んでもらえたし、逆に励まされてパワーをもらったというか。

そういう“コーヒーの持つ不思議な力”を強く感じて、出店を諦めていたのですがもう少し頑張ろうと思えたんです。

震災をきっかけに、コーヒーの力を今まで以上に感じられたのですね。売り手としての変化はあったのでしょうか?

 

盛岡以外の場所での開業も考えていたのですが、震災で弱った岩手を盛り上げないと意味がないと思い、盛岡で開業することに決めました。

それと、当初考えていたお店のコンセプトも変わりましたね。スペシャルティコーヒーに特化したトレンドや新しい価値観を提供したいと考えていたのですが、それよりもたくさんの人に喜んでもらえることが一番っていうことを根底に置くようになりました。浅煎りから深煎りまで置いて、お客さんの好みに応えられるお店でありたいなって。

オープンして初めのうちは、本当に家族を食べさせられるのかという不安も大きかったので必死でしたね。楽ではなかったけど、なんとか食べていけるようになって余裕ができたので、改めてコーヒーのことをいろいろ考え出すようになりました。

2018年10月1日には、店舗の拡大に伴い隣の敷地へ移転。それを機に、店名をNCと略したロゴにリニューアル。[ ]は空間、店舗、盛岡、東北、日本のこと。囲わないのは閉鎖的ではなく、外への発信や外からの吸収をする姿勢を受け皿のように表している。コーヒーを通して、人や文化などとの化学反応が生まれて欲しいという想いが込められている。

Sample detail

 

 

コーヒーロースター、それが本来の姿。

2018年に移転されたのは、新しい焙煎機を設置することも影響しているとお聞きしました。手に入れるのが難しいビンテージもののようですね。

 

1960年代にドイツの老舗メーカーが製造した「OLD PROBAT UG-15」という焙煎機です。クオリティの高いコーヒーを提供したいと思ったときに、この焙煎機の方が可能性があると、思い切って購入しました。実際焙煎もしやすくなったし、クオリティがさらに上がったのを実感しています。

ビンテージでかっこいいというのもあるんだけど、窯に使っている鉄の硬さや厚さが現行のものより上質と言われているので探している人も多いんです。バーナーもカスタムしているのですが、そうすると甘味やフレーバーが強く出るとか劣化が少ないとか、プラスの要素がさらに出てくる。
浅煎りも深煎りも得意な焙煎機なので、それぞれの焙煎度合いの豆を置いているラインナップと、豆の持ちの良さはうちの売りかもしれないです。

そうやって、自分で焙煎して納得できたコーヒーを「おいしい」と言ってもらえることが、一番のモチベーションです。

「OLD PROBAT UG-15」で焙煎をする長澤さん。香りや音、温度計を確かめながら、慎重に焙煎する姿には緊張感が。豆が煎られている音や煎り終えた豆の香ばしい香りが、店中に広がります。

 

焙煎というと豆の産地へよく行かれているようですが、どういった想いからでしょうか?

 

目で見て、肌で感じることを大事にしているんです。今の時代は何でも情報が集まるから、それでわかった気になるじゃないですか。でも、その土地の空気感や働いている方の様子など、行かないとわからない部分ってたくさんあると思うんですよ。

2017年に行ったエチオピアの農園では、生産者のなかに子供たちもいることをネットの情報で知っていたので、その子たちにあげようと鉛筆やノートを持っていったんです。喜ばれはしたのですが、そもそも学校がなくて教育を受けていないことをそこで知って、もっと根本的なことを考えさせられました。着ている服もくたびれていたり靴を履いている子も少なかったりして、本当に必要なのは靴や服だったと行って初めてわかりました。

コーヒー豆を買って少しでも生産者が潤うためにとか、そのお金がちゃんと生産者に行くようにとか、そういうことをすごく考えるようになりました。
僕らもそれで生活させてもらっているので、産地の方々もちゃんと成り立ってもらいたい想いはあるんですけど、そのハードルが高い部分は一個人でできることなんて限られているんですよね。

それが課題で具体的にできていることは少ないのですが、ちゃんと問題提起ができるお店でありたいし、ちょっとでも興味がある人がいたら話すようにして。現状を伝えられるように、なるべく産地に足を運びたいと思っています。

2017年に長澤さんが訪れたエチオピア・イルガチェフでのパーチメントコーヒー選別風景。暮らすだけでも大変な状況なのに、楽しそうに歌いながら作業をする姿に、長澤さんは感動したとのこと。

 

そういった姿勢も、ロースターとしてコーヒー業界の方々に慕われ続ける理由のひとつなんですね。

 

うちのメインだと思っているのはやっぱり焙煎で、コーヒーロースターが本来の姿。豆の販売や飲食店へ卸売りすることはオープン当初から決めていましたし、目の届かないことはしたくないので店舗展開は考えていないのですが、そうやって店舗を増やすことより、うちのコーヒーを使ってくれる飲食店さんが増えてほしいです。

今の卸先さんたちは、元々つながりがあった方や催事で知って連絡いただいた方で。卸にも力を入れていると言っていますが、こちらから営業かけたことはまだないんですよ。なので、「NAGASAWA COFFEEの豆を使いたい」と思ってくれている人にもっと使ってもらいたいですね。

 

最後に、今後はどのようなことを目指していかれるのでしょうか?

 

コーヒーを楽しむ人たちが、盛岡や全国にあふれてほしいなと思っているので、そういう影響を与え続けられるお店でありたいです。
そのために、まずは盛岡のコーヒーシーンを成熟させていくことに密着していきたいです。東北全般が少し閉鎖的というか、どこか大都市には敵わないだろうと思っている人も多いので、そうでないところを見せたい。

大都市は、情報もやることも早いので最先端のことを知りに行くにはいいのですが、それをまるまる盛岡に持ってきても受け入れられないだろうなってことも多いんです。そこで吸収したことをヒントに、盛岡ならどう受け入れられるかを考えていきたいですね。

僕が今気になっているカフェの一つに、ポートランドで行ったカフェ「Proud Mary(プラウドマリー)」があります。
Proud Maryはメルボルンのロースターとして昔から有名ですが、ポートランドのお店ではモーニングに力を入れていて。エスプレッソマシンなんかもSYNESSO(シネッソ)の特注品だったりして本気でコーヒーに取り組んでいるはずなのに、お店ではそこを一切売りにしていないんですよ。

そういうとっかかりの部分が面白いなと思っていて、モーニング目当てでもいいから、新しいお客さんの間口を広げられたらいいなと思っています。
とはいえ、コーヒー屋としても提案はしていきたいので、例えばフリードリンクにしてどんどん注ぎにいくようなサービスなんかもチャレンジしていければいいですね。

そういうきっかけでも、このお店を知ってもらって、コーヒーを楽しむ人たちが盛岡や全国にあふれてほしいなと思っています。そうやって、影響を与え続けられるお店でありたいです。

 

 

 

NAGASAWA COFFEEのサムネイル

NAGASAWA COFFEE

コーヒーライフをより豊かに
当店ではカフェや飲食店など業務店様へコーヒー豆の卸販売を行っております。 コーヒーを提供する為のオペレーションやトレーニング、コーヒーマシンや器具の事、コーヒーに関する様々なご相談に対応しています。 美味しいコーヒーを提供したいとお考えのオーナー様に、当店では出来る限りのサポートをさせて頂いております。 *当店の焙煎機について* 2018年11月より、焙煎機メーカーの老舗 ドイツ プロバット社が1960年代に製造した「OLD PROBAT UG-15」を導入しました。 焙煎機の心臓部と言える釜の鉄鋳物が現代のモノより上質で世界中のロースターから今でも非常に高い評価を得ている焙煎機です。 その蓄熱性の高さから、この焙煎機特有の焙煎が可能になり、総じて甘みやフレーバーが強く出る傾向があります。

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