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言葉を紡ぎ、デザインで伝えるコーヒーカルチャー。

造り手たちの想い18.10.17
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スペシャルティコーヒーの文化を伝える雑誌、「Standart」。スロバキアにあるニトラという小さな街で2015年に創刊し、日本では2017年3月に販売が開始されました。現在では世界53カ国以上で販売され、世界各国の読者を優れたコンテンツとデザインで魅了しています。スペシャルティコーヒーのお店には欠かすことができない雑誌、「Standart」について日本版編集長・室本さんにお話をお聞きしました。

 

 コーヒーカルチャーを形に残す

 「Standart(スタンダート)」の始まり

 Standartはヨーロッパのスロバキアにあるニトラという小さな街で生まれました。創業者のMichal Molcan(マイケル モルカン)は、今も毎年Standart主催で行なっている「Standart Fest」というコーヒーイベントを、当時成功させたことをきっかけにコーヒー業界の仲間入りを果たしました。そして、2014年にイタリアのリミニで開催されたAeropress Championshipに招待されたことがStandartが生まれる大きなきっかけとなったのです。

Sample detail創業者、Michal Molcan氏

 Aeropress Championshipでどのようなことがあったのでしょう?

 ビーチで行われたその大会でMichalは、コーヒーシーンの盛り上がりを肌で感じ、そこにしっかりと存在するコーヒーカルチャーを改めて目の当たりにしました。わいわいと誰とでも仲良くなれるその空間は、本当に楽しい時間だったそうです。そのイベントの帰りに、愛読書であるイギリス発のグローバル情報誌・Monocle(モノクル)を読みながら、“なぜコーヒー業界にはMonocleのように、デザインとコンテンツが同じレベルで考えられた読み物がないのか”とふと思ったそうです。また、これほどまでに楽しかったイベントがSNSの写真や記憶だけで残るのは寂しい、何か形に残るものを作れないだろうかと考えました。実際、当時はコーヒーの専門雑誌というとほぼ業界紙ばかり。デザインも見飽きたものでしたし、内容も広告ばかりで読みたいと思えるものはありませんでした。

 そこで当時はあまり存在しなかった、コーヒーカルチャーを優れたデザインとコンテンツで残すコーヒー専門雑誌を生み出そうと考えたのですね。

 そうなんです。Michalは、アートとジャーナリズムという観点からコーヒーカルチャーを伝える雑誌を作ろうと、そしてそのような雑誌で、コーヒーカルチャーを形として残せるのではないかと考えました。スロバキアに帰った彼は、デザイナーの彼女と共に数枚のデザインと雑誌のコンセプトを考え、友人たちと共に雑誌を作り上げました。この時はまだ、学生の楽しいプロジェクトの範囲だったそうですが、チェコ・スロバキア語と英語とでそれぞれ少量を印刷した初回ロットが瞬く間に完売したことで、雑誌を続けて行くことを決めたそうです。

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 3つの視点からみる普遍的なコーヒーの世界

 少量とはいえ初回ロットが瞬く間に完売というのはすごいですね。それほど多くの方が求めていた雑誌だったということですね。「Standart」はどのような内容なのでしょうか?

 5年10年経っても読める雑誌を目指して作られているため、その時に流行っているものを取り上げることもありません。できるだけ普遍的なトピックを扱うようにしています。記事の構成としては、3つのチャプターに分かれています。

一つ目は、「Coffee(コーヒー)」 コーヒーの生産方法から豆の種類、輸送、焙煎、飲み物として消費者に提供されるまで、いつも飲んでいるコーヒーに関する基本的なことから最新の研究結果や問題など、コーヒーをもっとよく知るためのチャプター。

二つ目は、「People(人)」 カウンターの向こう側のバリスタたちやロースター、インポーターや生産者、メーカーやショップの経営者といった人たちが、コーヒー業界をより複雑に、より面白く形成しています。業界のトップランナーとのインタビューや技術的な指南など、コーヒーに関わる全ての人々に注目するチャプター。

三つ目は、「World(世界)」 コーヒーは世界中で楽しまれています。様々な国や地域で、コーヒーの文化が育まれ、歴史を作り、コーヒーを中心として世界中がひとつの大きなコミュニティとなってきています。このチャプターでは、カフェインでスッキリさせた頭とクリアな視界で世界を観察し、読者と世界中を旅します。

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 広くコーヒーを知ることができるのは、世界中のコーヒー情報を取り扱っている「Standart」の大きな魅力ですよね。

 「1冊を通しコーヒーを通じた世界旅行をしてもらいたい」というコンセプトがあるため、全ての記事は世界の各地域から集めた内容で、記事のベースとなる地域が重ならないようにしています。例えば、中南米を舞台とした記事が一つあれば、他はアジア、ヨーロッパ、アフリカなどから記事を構成していきます。日本語版は、約6・7割が英語版Standartの最新〜バックナンバーを含めた号から抜粋した記事の翻訳で、残りが日本で取材した記事です。

 最近ではWEBマガジンなども増えていくなかで、なぜ「Standart」は雑誌という紙媒体にこだわるのでしょうか?

 イベントやカフェの空間で感じたこと、話したことを「形」として残したいからです。さらに、デジタルが溢れる生活の中で一人の時間、デジタルをOFFにした時間を本は作れると思いました。また、オンライン記事とは違う物語の伝え方ができます。オンライン記事は性質上、タイトルやリード文にフックを用意する必要があるので、クライマックスから徐々に進んでいく物語の進め方が多いですよね。一方、本はゆっくりと物語を進めていくことができ、ビルドアップしていける。そうすることで本は物語に厚みを出せます。​

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 SNSやオンライン記事とはまた違った、物語をじっくりと読み進める楽しみやゆったりとした時間の経過に、紙独特の味わいを感じます。

 本は紙の質感や肌触り・インクの匂い・重さやデザインなど、純粋に手に持つことの感覚がいいんです。古臭いと思う人もいるかもしれませんが、何かを手に持つ、触れる楽しさは万国共通だと思っています。これはコーヒーのハンドドリップにも通ずるものがあって、そこには職人のような厳格なさまがあるし、プロダクトと自分自身との物理的な距離を近く感じる。無機質に感じられることが多くなった世の中だからこそ、紙のもつ温かみは価値があると思います。

 

 あらゆる角度から「コーヒー」を知る、そして考える。

 Standartさんはどのようなことを伝えるために雑誌を作るのでしょうか?

 Standartはコーヒーに関する情報を多角的に捉えることで、コーヒーが飲み物として消費されるまでに発生する多くの人との関わりや、スペシャルティコーヒーのムーブメントの目的など、普段我々が口にするコーヒーについて、引いては自分たちが消費するものについて、少しでも考える時間を作って欲しいという想いがあります。

 そう言われると日常のなかで、自分たちが消費するものに対して考える時間というのはあまりないような気がします。
スペシャルティコーヒーのムーブメントの目的とはどのようなことなのですか?

 消費国と生産国の関係性・仕組みを少しでも良くしようというのが目的です。数十年前までは、コーヒーは大抵、コーヒー生産国で奴隷や極貧の農家が作っていました。今は奴隷はなくなりましたが、まだ極貧の農家が作っているところがほとんどです。消費国と生産国の関係は、残念なことに昔から今も大して変わっておらず基本的に消費国が得をする仕組みです。今でこそ、ヒップスターのような捉えられ方をされるスペシャルティコーヒーですが、目的は明確なんです。

 普段何気なくコーヒーを飲んでいるだけだと、その物の背景を知らないままになってしまいますね。

 コーヒーカルチャーは、ポップで、ユースカルチャーのように捉えられてしまうことがありますが、言ってしまえばコーヒーの多様性です。Standartはコーヒーをただの流行りで終わらせないために、コーヒーラバーや業界人だけでなく、多くの人にコーヒーの多様性=カルチャーを伝えたいと思っています。

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 室本さんは日本においてコーヒーとはどのようなものだと思いますか?

 缶コーヒー・インスタントコーヒー・スペシャルティコーヒーなど、様々なシーンでコーヒーが飲まれる日本では、お茶などに次いで消費量の多い飲み物なのではないでしょうか?多くの日本に住む人々にとって、ライフスタイルのひとつになっているように感じています。だからこそ、コンビニで100円のコーヒーと1杯400円〜500円のスペシャルティコーヒーは何が違うのか、何がスペシャルなのか、ということをしっかり情報として消費者の方々に伝えるのが僕らStandartの役目でもありますし、スペシャルティを謳っているコーヒーショップの役目でもあると思います。選択肢が多いからこそ背景を理解して、消費したいですよね。

 背景を理解し選択することで、商品がもつ本当の価値を知ることができます。また、そのように消費することで、スペシャルティコーヒーが普遍的なものになるといいですね。
今後、日本のコーヒーカルチャーに「Standart」としてどのように関わっていきたいとお考えですか?

 Standartは、その場所の文化に寄り添いつつ、様々な角度からアイデアや考え方を伝えることで、より熟度の高い文化の形成に役立つような役割でありたいです。そして、コーヒー業界だけでなくそれ以外の人にも届くように、コーヒーのコミュニティを形成していきたいですね。持続可能な生産やビジネス・人種や性などの差別・世界の文化や考え方、サプライチェーンに関わる全ての人々の声を届けることでギャップを埋めていきたいです。

 

 Standartと、コーヒーのコミュニティを形成していきませんか?

 Standartさんが実際にお取引しているお店はどのくらいあるのでしょうか?

 日本版Standartは、Allpress Espresso・Fuglen Tokyo・丸山珈琲などを含む80店舗ほどに販売いただいています。さらに、閲覧用として定期購読をしてくださっている店舗は、およそ170店舗ほどあります。皆さん優しい方ばかりで、コーヒーを数杯販売した方が利益になるはずなのですが、Standartを販売してくれる卸先が続々と増えてきていますし、定期購読を積極的にお客様に勧めてくださる方も多いです。これは、皆さんの言葉だけでは伝えられないコーヒーの世界や情報がStandartにはあるからだと信じています。たくさんのお店でStandartを置いていただき本当にありがたいですし、感謝の気持ちでいっぱいです。

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 スペシャルティコーヒーを提供する代表的なお店ばかりですね!そして皆さん利益ではなく、Standartさんの想いに共感され店舗でお取り扱いされているのですね。読者層はどのような方々なのでしょうか?

 Standartの読者は、5割がコーヒー関係者、4割がコーヒーラバー、残り1割がアート・デザイン関係の人たちです。コーヒー関係者に支持いただいているというのは、コーヒーを主とする雑誌にとって非常に信頼できるフィードバックですし、自信にも繋がっています。

 コーヒー関係の方だけではなく、アート・デザイン関係の方からも支持されている点に、Standartさんのデザイン性の高さが伺えます。室本さんにとって、「Standart」を通しコーヒーショップと繋がるということはどのようなことを意味するのでしょう?

 コミュニティの形成でしょうか。Standartはコーヒーに物語と意味を与え、そしてその声が聞けるプラットホームになりたいですね。考え方やアイデアというものが、業界とコミュニティをより結びつけ強くしてくれると信じています。世界中のコーヒーショップやコーヒーラバーがStandartを通じて繋がり合うことで、コーヒーのコミュニティが形成されていくのだと思います。

 コーヒーのコミュニティを形成するためのプラットホームということですね。

 決してStandartが中心にいるということではなくて、全員がフラットで繋がるという意味ですね。コーヒーショップやロースター・インポーターなど、様々な立場でコーヒーに携わっている人がいて、それぞれ独自の方針と思いがあります。いろんな思惑があるためなかなか一つになりにくいのですが、Standartはある意味中性で、いい意味でも悪い意味でもどこにも属していません。だから自由でもあります。常に第三者的に俯瞰していたいですね。

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 コーヒーを多角的に捉えることで、その背景やカルチャーに関わる多くの方ともフラットに繋がることができます。また、洗練されたコンテンツとデザインだからこそ実際に手に取りじっくりと読みたくなる。「Standart」は、コーヒーのコミュニティを形成していくのに欠かせない一つのツールなのかもしれません。

それでは最後に、実際にお取引されているコーヒーショップの声をご紹介させていただきます。

 

 「Standartは唯一無二の雑誌です。様々な視点から紡ぎ出される記事の数々は、時には世界を旅してコーヒーを楽しんでいる気分に、時には深く考えさせられるような、エッセンスがちりばめられています。」(WEEKENDERS COFFEE)

「Standartは、今まで英語のみでしか情報がなかった内容も読み解くことができ、世界のコーヒー事情が知れる参考書のような本です。デザインも良く、読み手を飽きさせないのも魅力です。」(Single O Japan)

「Standartは、確固たるスペシャルティコーヒーへの愛と情熱を感じられる雑誌です。広大で複雑なコーヒーの世界を、優れたコンセプトと、美しいデザインで紹介してくれます。」(Fuglen Tokyo)


コーヒーカルチャーを雑誌という形にして届ける「Standart」。皆さんのお店には置いていますか?

 

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Standart

コーヒーが生み出す会話、出会い、そして濃厚な時間。私たちを惹きつけるのは、コーヒーの持つそんな魅力です。 Standartは、「美味しいコーヒーを誰もが気軽に楽しめるようにしたい」という想いから始まった、コーヒーカルチャーを伝えるインディペンデントマガジン(季刊誌)です。コーヒー業界で働く人々、コーヒーが大好きな人たち、そしてコーヒー文化やその文化が生まれる場所を「繋げる」ために厳選されたコンテンツを読者にお届けしています。 現代はデジタルで溢れかえっています。優れたコンテンツは、じっくりと腰を据えて読む価値があると信じているStandartにとって、紙媒体こそが、洗練されたデザインを通して世界中から届く素晴らしいメッセージを伝える最適な手段だと考えています。120ページ以上もの美しくデザインされた1冊の本には、インタビューや知的好奇心を刺激する記事、世界都市ガイドやショートストーリーといった様々な角度から捉えたコーヒーの魅力がぎっしり詰まっています。 様々なブランドが、心地よい読書の時間を届けるコンテンツの一部となり、パートナーやスポンサーとしてStandartをサポートしてくれています。Standart Japanは、日本国内のスペシャルティコーヒーショップや書店にてご購入可能です。 定期購読をお申し込みいただいた方だけの特典として、印刷されたばかりのStandart Japan最新号と共に、著名なロースターで焙煎された試飲用のコーヒー豆をあなたの家までお届けします。

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