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FEATURE

旅する八百屋は「旅」をやめない

農家で働いていた際に無農薬野菜が本来の価値を見てもらえないまま廃棄されている現状を知り、自身で野菜そのものの個性や美味しさを家庭や飲食店に届けることを決意した通称“旅する八百屋”さん、ミコト屋。
店舗を持たずにキャンピングカーで全国の農家を駆け巡る、それが彼らが旅する八百屋と呼ばれる所以。

コミュニケーションや情報の収集がネットやSNSなどで簡単にできてしまう現代において、対面で相手の温度を感じながら信頼を結ぶことを大切にし、農家の方と話すことで見える野菜のストーリーを消費者へとつないでいます。

コンスタントに仕入れが必要な飲食店に対して、ミコト屋さんが効率やスピードで応えるのは少し難しいかもしれません。だけど、野菜の奥深さや楽しみ方の幅を広げたり、“モノ”だけのつながりじゃない関係性がきっと築ける。八百屋として新たな価値観を発信するお二人が考えるミコト屋らしさや、取り扱う野菜についてお話をお伺いしました。

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写真左:山代徹さん・写真右:鈴木鉄平さん、お二人は高校時代からの友人。二人で仕事を辞めバックパッカーでインドやネパールへ旅をした際に、精神的な豊かさや食べ物の力を感じたことが今の仕事をはじめるきっかけになった。

 

 

旅する八百屋のはじまり

 

ミコト屋さんで取り扱う野菜はどのようなことを基準に選ばれているのでしょうか?

 

鈴木さん:それはもう完全に人ですね。もちろん野菜の味や栽培方法も重要ではあるんですけど、どういう人がどういう思いで育てていて、どういう姿勢で畑に向かっているのかというところ。あと僕らとバイブスが合うかっていうところはすごく大事にしていますね。あの人がつくっているから大丈夫っていう安心感が僕らも欲しいし、逆に相手にもあいつらが売ってくれているから大丈夫だろうっていう安心感を持ってもらいたいと思っています。

 

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山代さん:僕たちは農家さんを訪れた際に商売の話はしないんです。そういう話は事務所に戻ってから電話でする。

 

鈴木さん:おじいさんとおばあさんの馴れ初めを聞いたり、全然野菜に関係ないたわいもない話をしたり。そういう人と人との信頼関係をつくりたいと思って農家さんを訪れているから。同時に僕らのことも包み隠さず知ってもらいたいという想いもあるので、あんまり取り繕わずに接するようにしています。

 

山代さん:農家さんたちからしたら“あいつら何しに来たんだ”みたいなこともあったと思いますね。それくらいでいい。僕たちがオープンでいれば農家さんもいろいろ話してくれるじゃないですか。それが僕らも嬉しいです。

 

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生産者さんとは農家さん同士の紹介や、ミコト屋さんが卸している飲食店さんなどから教えてもらいつながっていくことも多いそう。

 

 

ミコト屋さんで取り扱う野菜は一般的にスーパーで販売されているものに比べると、価格は高くなっていますよね。

 

鈴木さん:一般的なものに比べて高いとは言われますが、“適正価格”だと思っています。それは農家さんたちも僕たちも利益が取れて商いを続けていける“適正価格”。販売するまでにかかったコストや、労働力に対しての適正な金額を出すとそれぐらいになるよねっていうことなんです。逆になぜスーパーにはめちゃくちゃ安い野菜があるんだろうってことに関してはあんまり考えないじゃないですか。そういうことを考えるきっかけになってくれたらいいなとも思います。

 

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お二人は実際に農家で勉強をなさっていたとお聞きしました。

 

鈴木さん:いくつかの農家さんのところでお世話になりました。その中に完全に無農薬・無肥料のオーガニック野菜を育てている農家さんがいたんです。

 

最近では専用の通販サイトなどもあり、オーガニック野菜を身近に感じる機会も多いですね。

 

鈴木さん:収穫したオーガニック野菜を出荷組合に持って行くのですが、そこでは色・艶・形が重要視され、本当に見た目至上主義なんです。少し虫食いがあったり、形が悪かったりするだけであっという間に値段を落とされちゃう。食べてもいないのに見た目だけで評価されちゃうんです。だからオーガニック野菜を栽培している農家さんは、せっかく安心安全を思いながら育てた無農薬野菜を廃棄することも多く、お金にならない場合が結構ある。そういう現状に直面しました。

 

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オーガニック野菜の本来の価値を受け入れてもらえないのは辛いですね。

 

鈴木さん:ミコト屋でも結構取り扱っていますが、昔からの在来種や固定種のようなものは形がバラバラだったり個性的だったりします。見た目が不揃いなことだってすごい自然なこと。だから普通にきれいな大根だったら10本入るところが、個性的な形をしている大根では6本しか入らない場合があるんです。でもそれって流通側から考えるとめちゃくちゃコストに響くじゃないですか。そういう流通の都合ってすごく大きいんだということを知ったんですよね。

 

どうしても一般的な野菜に比べると不利になってしまいますよね・・・

 

鈴木さん:あとは消費者が虫食いとかを嫌うから、自然に育ったものがなかなか売れないというのもある。食べる人のことや環境のことを想って野菜をつくっている人たちが馬鹿を見るというか、正直な人が損をするじゃんって。だったらそういうことを野菜の個性として伝えられる流通が必要だなって思ったんです。農家になりたかったという思いもありましたが、ストーリーを伝える八百屋が必要だと感じ、八百屋になろうと決めました。

 

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ご自身が生産者としての気持ちがわかるからこそ、野菜の背景にあるストーリーを伝えていきたいと思われたのですね。

 

鈴木さん:出荷したものを箱に詰めトラックに積んでいくんですが、一番上の箱にある2、3本だけチェックされるんですよ。それで軽トラ全体の値段が決まる。そうすると僕も「よし、一番上に一番いいものを置いていこう」っていう気持ちになるんですよね。そういう生産者と流通の間に信頼関係がないことも問題だなと思いました。やっぱり食べる人たちへの信頼につながっていくから。まず僕たちは生産者と密に信頼関係をつくって、それを消費者に伝えるという“距離感”を大事にしたい。普通に市場へ出荷するだけでは誰がつくったものなのかなんて、見えなくなっちゃうしわからなくなってしまうんですよね。

 

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鈴木さん:生産者も自分がつくったものを通してなんの声も聞こえてこないから、いい加減なことをしちゃう気持ちもわからなくもないというか、モノ化しちゃうというか。実際俺も一番上にいいものをって、いい加減なことをしちゃったし。自分がつくったものに対して美味しいとかまずいとか、何かしら声が返ってきたらめちゃくちゃ農家さんもやりがいにつながると思うんですよね。そうやって本当の意味で食べ手を意識できたら、農薬もそんなに使わなくなるんじゃないかなって単純に思うんです。農薬を好きで使っている人はそんなにいないから。

 

生産者さんと信頼関係を築くなかで知る野菜の個性や背景を、消費者へ伝えていくことで報われる農家さんがたくさんいらっしゃるのですね。
ところで“旅する八百屋”というテーマは、自らの足で各地の生産者を訪れるというところから生まれたのでしょうか?

 

鈴木さん:そうですね。テーマとしてはもちろんあったし、最初はというか今もなんですけど、店舗をもつお金もなかったし(笑) “旅”という好きなものが仕事にできるという嬉しさもありました。あとはお店を持って受け身でいるよりも、自分たちから動いていけるようにしたいなっていう気持ちもありました。僕らは市場へ行かない代わりに、農家さんと直接会って畑を見に行く。日帰りというよりはそれこそ旅をするように、しばらくキャンピングカーで野営しながらいくつも回っていくのですが、それが僕らの楽しみのひとつなんです。

 

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夏に旅することが多いが車のエアコンが効かないため移動中とても暑く、川があればいつでも飛び込めるよう車には海水パンツを常備しているそう。

 

 

野菜という“生き物”を届ける

 

ミコト屋さんのように、生産者さんや農家の人たちの顔や声を感じられる野菜を取り扱うお店も増えているような気がします。

 

鈴木さん:最近は消費者から求められているからか、少しずつスーパーにも産直コーナーやオーガニックコーナーが増えていますよね。それはすごくいい事だと思う。今はいろんな業者が野菜を卸したり宅配したりしていて、そこに対して僕らは絶対に利便性じゃ勝てない。だからこそ僕らは“ミコト屋らしさ”っていうのを追求していかなきゃいけないと思っています。

 

お二人が考える“ミコト屋らしさ”とはどのようなことなのでしょう?

 

鈴木さん:自分たちができることは、生産者から届くストーリーを野菜にのせて消費者に届け、さらに消費者から返ってくるフィードバックをまた農家さんに届けるという、潤滑油的な役割。それを個人や飲食店に対してやっていけるのが理想的です。それをやらなかったら、僕らじゃなくていいっていうことになってくるんですよね。とはいえ気構えすることなく野菜を楽しんでもらえるのがもちろん一番。“美味しい”って感じてもらえたら、なんで美味しいんだろうって考えるじゃないですか?それをきっかけに興味を持つ。だからやっぱり“美味しい”っていうのはすごく大事な要素ですよね。

 

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野菜の味は一年を通してまったく同じではない点も楽しいなと思います。

 

鈴木さん:僕らは北海道から沖縄まで、全国の生産者さんたちがつくる旬の野菜を取り扱っています。野菜は季節の便りなので、その時々によって僕らも推したい野菜ってあるんですね。例えばトウモロコシなら、僕らは北海道のトウモロコシが好きなのでメインで取り扱っているんです。でも北海道のトウモロコシが出る頃、本州のトウモロコシは一通り出たあとで、あんまり売れなくなってしまう。すでに食べ飽きてるみたいな。

 

そのようなことはなぜ起こるのでしょうか?

 

鈴木さん:今、スーパーとかって旬が早いんですよ。なんでかっていったら初物が売れるから。だから農家さんもビニールハウスで暖房設備をつけていち早く出荷しようとする。でもそういう野菜って、本来の旬の通りにつくられた野菜に比べたら栄養価も美味しさも敵わないんです。それでも高く売れるからみんなそこを目指しちゃうんですよね。

 

山代さん:確かに早く出荷したほうが売れるけど、味の違いがめちゃくちゃ出ます。ちゃんと季節と土地に合っている野菜は、本当に美味しい。

 

鈴木さん:本来の旬でないものはあんまり美味しくないから、いろんな味付けが必要になるんですよね。素材がちゃんと個性を放っていれば、そこを生かした料理のしがいもあるんじゃないかなと思います。

 

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奄美大島で50〜60年ほど続く在来種の島みかん。とても香りが良い。無農薬なので安心して皮まで料理のアクセントとして使える。

 

 

本来の旬に味わうからこそ、野菜のもつ生命力や自然なうまみを感じることができるのですね。

 

鈴木さん:うちの子供たちが結構シャインマスカット好きなのよ(笑) だって食べやすいじゃん、種もないし、甘いからね。一方、ミコト屋のブドウって自然のブドウが多いから、蜘蛛の巣張ってたり、必ず種が入っていたり、皮も渋い。

 

スーパーや百貨店などで見かけるのは食べやすいブドウばかりです。

 

鈴木さん:品種改良によって本当は食べづらいものが食べやすくなったりとか、虫に強いものができたりとか、技術の研鑽ってすごいですよね。そこは否定しちゃいけないとは思うんです。でも種無しってジベレリンというホルモン剤を使って、要は受粉したと勘違いさせるんですよね。それで大きくするんで種が入らない。

 

山代さん:そういうことをちゃんと理解することで、うちで取り扱っているような野菜の良さがわかるというのもある。

 

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知ったうえで選択するのと、まったく知らないのとでは全然違いますね。

 

鈴木さん:昔のキュウリって結構苦味があったりするんですけど、そこが美味しいんですよね。苦味の中に旨味は絶対にあるし。そういうことを知っていくと野菜って奥深いなって思うし、楽しみの幅が広がっていいなと思いますね。こういう野菜に対して“生き物だな”ってすごい感じるんです。人って生き物を食べて生きているから、食べるものにちゃんと生命力があるかどうかというのはすごい大事だと思うんですよね。

 

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移ろう味わいを託す、心の関係性。

 

ミコト屋さんを始めた当初から飲食店さんへ野菜を卸されていたのですか?

 

鈴木さん:ほそぼそとずっと続けてきてはいるんですが、個人への宅配がメインではありますね。 ただミコト屋の強みであるストーリーのある野菜を飲食店さんも実はすごく求めているじゃないのかなぁと感じています。だから今後絶対ニーズも増えると思うので、さらに力を入れてやっていきたいです。

 

山代さん:だからといって極端には増えていないですけどね。POMPONCAKES(※1)、MERCIBAKE(※2)あとBROWNRICE(※3)など、ある程度決まったところという感じはしますね。やっぱり難しい。うちの野菜が別に高いとは思っていないけど、一般的に見たら安くはないし、やってみたいという飲食店さんはいるけどコストがかみ合わないことも多いんです。

 

(※1)POMPONCAKES:素材の味を生かした優しい味わいが特徴の鎌倉にあるケーキ屋さん。(※2)MERCIBAKE:松陰神社前にある旬の野菜や果物を生かしたケーキ・焼き菓子のお店。(※3)BROWNRICE:四季を大切にしたヴィーガン料理を提供する表参道のレストラン。

 

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鈴木さん:うちの野菜を普通の野菜と同じように使っていたら、多分飲食店もあまりメリットがないんですよ。だからちゃんとそこをお店としてブランディングしていくというか。例えばPOMPONCAKESは、お店のストーリーが明確にあるし、それをちゃんと伝える使命感も持っています。うちの野菜を使ったケーキ単品でみると原価が高くついてしまうものもあるかもしれませんが、他のもう少し安い食材や材料を使ったものなど全体でバランスをとりながら使ってくれているんです。

 

コスト以外の面で一般的な卸と異なるところはありますか?

 

山代さん:旬の野菜を取り扱うミコト屋では一年通して絶対にある野菜というのがないんですよ。ジャガイモでもニンジンでも絶対に途切れる時期はあるし、四季によって値段が変動する野菜もあります。だからメニューありきのお店より、食材ありきでメニューをつくっていくようなスタンスのお店じゃないと難しいというのはあるかもしれません。

 

鈴木さん:そこを例えばラーメン屋とかでもネギはこの時期しかないなら、違う時期はカブの葉っぱでも大丈夫ですみたいな、そういう考え方のお店だとおもしろいなと思うんですけどね。

 

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誰もがミコト屋さんの野菜を取り扱えるわけではなさそうです。

 

山代さん:うちの商品を取り扱ってくれている飲食店さんは似ていますね。食材に対しての考え方をちゃんと持っているというか、言うことが似ているんです。特にPOMPONCAKESとMERCIBAKEでは2店ともキャロットケーキをお店で出しているので、ニンジンに対しては結構うるさい。うるさいというより「今年の水分少ないですね」とか、すごいわかっているしこだわりがある。そうやって同じニンジンでも年ごとに違ううちのニンジンを、レシピかなにかを変えたりして調整してくれているのかなと思います。

 

しっかりそのときの食材のコンディションと向き合って調理されているのですね。

 

山代さん:嶺央(POMPONCAKES店主)なんてよくいろいろ質問してきますね。「これすごいですね」とか「欲しいんで連絡くださいね」って言うんだけど、電話すると100%出ないっていうね(笑)

 

鈴木さん:本当につかまんないよね(笑)

 

山代さん:蹴飛ばしてやろうかと思うようなときもある(笑)

 

鈴木さん:でもやっぱり感度はすばらしいし、彼は極力手を加えずいかに食材本来の美味しさを引き出してつくるかというのを命題として持っているから、“そんな風に使ったんだな”って俺たちもすごい勉強になる。

 

山代さん:嶺央は本当にまっすぐというか、農家さんに対しても俺らに対してもそうなんだけど、本当はこの野菜や果物はこのまま出したら一番美味しいんじゃないか?あれこれしてケーキにするのってどうなんだろう?という葛藤を常に持ちながら使ってくれています。

 

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たっぷりニンジンが使われたPOMPONCAKESのキャロットケーキ。しっとりとしたスポンジケーキにクリームチーズがコーティングされており、シナモンの風味が後をひく美味しさ。

 

 

山代さん:彼らが共通してすごいなと思うのは、クレームを言わないんですよ。あるものに対してそれはそれでしょうがないっていう受け止め方を持っているから。よほどひどかったらあれですけど、でも基本的にそういうのは一切ない。

 

鈴木さん:あとは当たり前だけど、野菜をモノとして見ていない人たち。ちゃんと生き物として扱ってくれて、生産者に対してのリスペクトもちゃんとある。飲食店の廃棄量ってめちゃくちゃ多いけど、そういう人たちはあんまり廃棄もしないですね。生産者さんとの距離が近ければ近いほど大事に使おうって気持ちにもなりますよね。

 

山代さん:みんな真面目だけどガチガチに真面目すぎなくて、ちゃんと遊び心もある。意識も知識もちゃんとあるけど、みんなそれを一番に謳っていかないというか。オーガニックのニンジンを使ったケーキですみたいな、POMPONCAKESもMERCIBAKEも絶対言わないですからね。でも聞かれたらちゃんとそこについてのストーリーを話せるスマートなタイプです。

 

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飲食店さんへ卸す際の課題などはありますか?

 

山代さん:飲食店さんって量もそうだけど、わりとクイックに欲しかったりするじゃないですか。その辺は僕らには限界がある。注文も1週間前にはもらうし(笑)

 

鈴木さん:あとは野菜のストーリーを飲食店さんにどれだけ伝えられるかっていう。そこがうちで野菜を卸すメリットでもあるし、飲食店さんにしっかり伝えられればお客さんにもダイレクトに届くと思うんですよ。嶺央とかみたいに興味を持ってどんどん聞いてくれるとこっちも細かい情報まで出せるけど、それと同じことを全部のお店に対してやるとなるとめちゃくちゃ大変なんです。でもそこをちゃんと伝えられるようになれば、うちの野菜を使ってくれる人ももっと増えると思っています。

 

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ミコト屋さんから野菜や果物を仕入れているPOMPONCAKES店主・立道嶺央さんにお話を伺いました。立道さんはお店で使う食材をどのように選んでいますか?

 

立道さん:自分たちが働くうえで楽しくかつ気持ちよく使えるものかを基準に選んでいます。僕の場合は誰がどんな想いでつくったとか、どこで採れたものだとかそういうストーリーの部分に気持ちが上がるんです。みんなにおいしいものを食べてもらいたいとか、自然栽培だとか、そういうことはその後についてくるものという気がしています。

 

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ミコト屋さんで取り扱っている野菜を使って、ケーキをつくるとき大変なことはありますか?

 

立道さん:水分量が違うなどテクニカルな部分で工夫しなくちゃいけないことはあります。ただそもそもうちのケーキの味は、つくる人のコンディションなんかでも変わるから常に同じ味じゃないんです。だからその時々によって変わるミコト屋のニンジンやカボチャの味わいをケーキを通して感じてもらって、野菜や果物の味が変わることは当たり前なんだよって伝えていくことが大事かなと思う。だから味が一定じゃないのはすげえいいと思う(笑) ミコト屋が持ってきてくれる野菜は、野菜の向こう側にいろんな人がいるということを感じさせてくれるので、可能な限り残さず使いたいなといつも思っています。

 

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立道さんが想う“ミコト屋”の魅力とはどのようなところでしょうか?

 

立道さん:お互い正直な関係でいられること、仲間感。それがいつも一番の魅力だなと思っています。鉄平さんも徹さんもできないものはできないって言うし、コストが合わないものは合わないって言ってくるし、無茶ぶりもしてくるし、でもそういう関係って仕事だとなかなかつくれないじゃないですか。日々常にコミュニケーションをとっていくなかで、“この人たちとだったら大丈夫だな”って思える。それがすごく大事なことなのかなと感じています。

 

これからのミコト屋さんに望むことはありますか?

 

立道さん:今はある程度決まったものだから、もうちょっといろいろなものを取引したいかなとは思っています。徹さんにも“もうちょっと果物頑張ってくれ”って話してはいるけど(笑) でもミコト屋のフィルターにかかる果物が少ないっていうのもわかっているので無理はしなくてもいいかなって。あとは、もうちょっとイベントとかも一緒にやりたいですね。

 

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ミコト屋さんが卸している飲食店とは大切にしている部分が一緒だからこそ、安心してストーリーをつないでいけるのですね。

 

鈴木さん:スケールさせていくためにも、僕らがある程度融通を利かせて合わせなきゃいけないところもいろいろあるんだけど、なかなか頑固なところもあって。あんまり俺らが飲食店さんにアジャストしていってる感じではないんですよね(笑)

 

山代さん:僕らの野菜って安定していなくて、例えば果物だったら昨年に比べて甘みよりも酸味のほうが強かったり、なんか少し水っぽい年もあったり、同じ生産者がいくら同じようにつくっても年々変化するもの。それこそ収穫し始めの時期と終わりの時期でも絶妙に変化していくものなんですよね。だから同じものを求められても僕らは絶対答えられないし、答えるつもりもない。そういう微細な変化や移ろいを楽しみながらやっていきたいんです。旬の本当に美味しい野菜を届けたい。僕らもそこはしっかり自信を持って美味しいと言えるものしか入れないようにしているから。

 

鈴木さん:最近はワインとかも酸味とか微細な違いを楽しむ文化があるじゃないですか。でも野菜ってああいう表現方法がまだない。野菜こそシンプルに食べれば食べるほど絶妙な変化を感じられるものなので、そういうところをちゃんとお客さんに伝えていきたい、という飲食店さんにならすごい喜んでもらえるんじゃないかなぁ。

 

 

 

 

一歩場所を変えてみる、それは大きなはじまり。

 

ミコト屋さんというと、イベントやマルシェなどにもよく参加されているイメージがあります。

 

鈴木さん:そうですね。イベントがなんなのかもわからないまま近所の公園で売ったりしたけど、全く売れずに終わったりとかそんなところから始まりました。昔は野菜のイベントしょっちゅう出てたよね。年に何回も什器つくり変えたりね。いかに野菜を並べるかみたいな。

 

山代さん:宅配もそんなに多くなかったし、とにかくイベントに出ないとみたいな。でもイベントに出たことによって知ってもらえたっていうのはあるかもしれないですね。

 

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昨年の夏、二子玉川の商店街にある笑顔が眩しいご夫婦が営むコーヒーショップ「let it be coffee」さんで開催されたイベントに、広島県尾道市向島でカカオ豆を農園から仕入れ・焙煎・製造まで行うチョコレート工場「ushiochocolatl」さんと参加。ミコト屋さんは、東京を走るをテーマにつくられた自転車屋さん「Tokyobike」さんの協力の元つくった自転車カキ氷機“ペダルパワー”と、ミコト屋特製の南高梅・プラムなどの果物を使用した酵素シロップでイベントを盛り上げた。

 

 

ミコト屋さんが発行していた冊子は、写真や内容のクオリティが高くすごく素敵ですよね。

 

鈴木さん:10年ぐらい前?ミコト屋を始めた頃につくったんです。野菜と一緒に送っていたレシピ集。例えばブロッコリーだったら、ブロッコリーについてちょっとした内容と二つぐらいレシピを掲載しているんです。レシピはそんなに難しくないものですね。写真は仲間のカメラマンが撮影してくれて、レシピの内容は近所に住んでいる料理人の方に野菜と物々交換で教えていただいていました。二週間に一度出していたんですけど、自分たちでつくるとはいえコストもかかってしまい結構大変でしたね。今は料理人の方が山形に引っ越しちゃったこともあって一回止まっています。

 

このような冊子をつくろうと思われたのはなぜですか?

 

鈴木さん:単純に野菜だけっていうアプローチだと食べることが好きな人や、食に感度のある人たちしか興味を持ってくれないじゃないですか。僕らは単純にこういうもので間口を広げたかったんですね。なんだろうこれって、八百屋の冊子なんだって。このビジュアルに興味を持ってくれる人でもいいんですよ。だからアパレルのお店とかから「これ置かせてください」って連絡があったりして、僕らとしては願ったり叶ったりというか。

 

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まずはミコト屋自体を多くの人に知ってもらうためにも大事なツールだったのですね。

 

鈴木さん:野菜に全然興味ない人たちに広げていかないと、やっぱり僕らが扱っている野菜がメインストリームにのるということはないんですよね。もともと興味ある人だけに届けているとマイノリティからずっと抜け出せないじゃないですか。だから興味ない人たちにもいかに届けるかというのは、ある意味俺たちのミッションだと思っているんです。なかなか難しいことではあるんですけど。

 

まったく知識も興味もない方々にはまずどのように取り入れてもらいたいとお考えですか?

 

鈴木さん:賛否両論あるかもしれないけどライフスタイルとして取り入れてもらう。こういう野菜を宅配で頼んでいるっていうこと自体が、生活に彩りがついて自分にとってプラスになるとか、そういう想いの部分から始めてくれてもいいんですよね。それが生活に落とし込まれて馴染んでくれたらお客様になってくれるし。まずはきっかけづくりという意味でこういうものをつくったり、今は映像をつくったりもしているんです。

 

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イベントに参加したり冊子や映像をつくったり、様々なきっかけづくりをしてみて何か感じることはありましたか?

 

鈴木さん:なんだか食に対して二極化しているような気もする。いろんな人がいていいとは思うんですけど、興味をどんどん持ってくれている人たちが増えてる一方で、別に食べ物は安くていいでしょう、削るなら食費でしょうっていう人たちも増えているような気もします。

 

山代さん:ミコト屋を始めた頃、お客さんは子育てが終わった世代の方やお金に余裕がある方たちが多かったんです。でも僕らは始めた頃も今も、どちらかというと若い方に意識を変えてもらいたいっていう気持ちが強いんです。ただ僕らもそうだけど、僕らよりもっと若い世代の人たちがミコト屋で取り扱っているような野菜を、毎日のように食べていくのは経済的にも結構ハードルが高いというのはよくわかるんです。だから月1回のお楽しみとしてやってくれるとかでも全然いいと思うし、無理せず少しずつ始めてくれれば。

 

鈴木さん:自分たちもそうですけど、電化製品とかまだ使えるのにどんどん新しいものに買い替えたりして。そういう本当は“必要ないもの・削れるもの”ってあるじゃないですか。でも食べたらなくなっちゃうようなものに対しては、みんなあまりお金を払いたがらないですよね。でも見方を変えれば、明日の自分につながっているのも、自分の中にずっと長く残るのも食べ物だと思うんですよね。だからそういうところに少しでも意識を向けてもらえたら、ちょっとずつ変わっていけるかなとは思うんですけどね。

 

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ミコト屋さんが届ける野菜を家庭や飲食店を通じて食べた人たちが、自分の身体が喜ぶ食べ物や、野菜に込められたストーリーについて少しでも考えたり感じてくれるといいですね。
今後挑戦してみたいことなどはありますか?

 

鈴木さん:ミコト屋って実態ないよねって言われるんです。イベントもいろんなところに行ってるし、告知もわりとギリギリで、会いに行きたくてもどこに行けばいいかわからないって。今までは店を持たないっていうことに強みを感じていたけど、誰もが来れるオープンな場を自分たちが持つということはひとつ大事なことでもあると思うようになりました。お店があればそれこそ在庫を積んでクイックに卸せたり、今までより思い切った発注ができたり、飲食店への問題も解決できる部分があるんですよね。

 

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鈴木さん:ただ旅に出ていろんなところに行くと、常にフレッシュなものに会えるじゃないですか。ずっと同じところにいると同じことしか見えないけど、違う場所や視点から自分たちを俯瞰して見ることもできる。やっぱりそういう旅で得たものが、僕らの活動の原動力になっているっていうのは確かです。

 

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