目指すは馬喰町のダイナー。街に寄り添い続けた10年 -後編-

お店紹介
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東京の東側、隅田川と神田川に挟まれるようにしてある馬喰町。かつてはアパレルの問屋街として栄えた街ですが、昨今では再開発が進み、お洒落なカフェや雑貨店も増え、注目が集まってきています。
その中心地にお店を構え、10年以上街と共にあるフクモリ。山形の食材を活かしたメニューを提供しており、昼は定食が美味しいカフェとして、そして夜はお酒も楽しめる定食屋として愛され続けてきました。

今回は、そんなフクモリについてオーナー・小松裕行さんにお話をお伺いしています。前編では、当時まだ何も無かった馬喰町でお店を開いた理由や初期のお店づくりについてご紹介しました。後編では、再開発が進み大きく変化する街の中で、どのように10年以上も続けてこられたのかをお届けしたいと思います。

前編はこちら

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街に寄り添うための「仕組み」をつくる。

お店を開かれた当時と今とでは、この辺りの雰囲気もかなり変わってきていると思いますがいかがでしょうか?

 

それはフクモリがオープンした前後で大きく変わるのかもしれません。開業当時はアートギャラリーこそたくさんあってカルチャー度が濃い時期ではあったのですが、住民はほとんどいなくて、飲食店もサラリーマン向けの安い定食屋さんがあるくらいでした。

2009年にフクモリができた翌年、雑誌のBRUTUSで「いま、東東京がおもしろい」みたいな取材をフクモリも含めて数店舗でしてもらった頃ぐらいから街全体が注目されるようになったんです。遠方から雑誌を見て来てくれるお客さんも多くなったり、下北沢で有名な雑貨屋さんが隣のビルに入ってくるようになったりして。フクモリをきっかけに馬喰町や東東京を巡るような過ごし方をするお客さんが増えて、徐々に街に活気が出てきました。

それから10年くらいかけて、この辺りの古ビルが売却され新しいマンションが建って住民が増えたのと同時にアートの流れも落ち着いて、問屋だけがある街ではなく、カフェや雑貨屋さんが集まる今のような街になっていきました。

Sample detail毎年恒例で行われている「フクモリ 夏祭り」。近隣のお店と協力してスタンプラリーやワークショップ、ライブを実施し、“モリ”という独自通貨でフードやドリンクを購入できるようになっている。昨年は開業10周年ということで盛大に開催された。

鳥山さんが願っていた、街に住んでいる人と新しい人が交じり合う場が作れたのですね。

 

そうですね。ただ、そういった雑誌を見て来てくれた人が押し寄せたことで、オープン当初を支えてくれた街の人たちが逆に来れなくなってしまったという側面もありました。
2013年に鉄道指定文化財である神田のマーチエキュートにフクモリの2号店ができてからは、写真映えがするので雑誌を見て来ていたお客さんはそっちに行くようになってまた街の人たちが来れるようになったのですが、コントロールできなくなるのでメディア露出って難しいなと感じましたね。

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街自体が大きく変わるなかで、フクモリが親しまれ続けるためにどういったことに注力されてきたのでしょうか?

 

一つはフクモリの価値である、味ですかね。日々進化させつつも、常に安定した味を提供できるようにしてきました。例えば、フクモリのメニューは山形の食材の魅力を伝えることを大事にしているため、創業以来食材の業者さんや生産者さんを変えていません。
また、その素材を活かすために調理方法は極めてシンプルにすることで、作り手によって差が出ないようにも気を付けています。オペレーションだけで言ったら目指せファミレスです(笑)

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Sample detail毎週火、水、木曜日に販売されるお弁当は、お昼時になると近隣で働く人たちで列ができるほどの人気っぷり。この日のメニューは、定番のだし巻きたまご弁当や根菜たっぷりドライカレー、日替わり弁当は山形ハーブ鶏きじ焼き。

 

あとはやっぱり“街に寄り添う”というスタンス。
もともとフクモリのコンセプトは、見た目ではなく考え方としてパリのカフェみたいな、街の機能の一つとして必要とされるようなお店を目指していました。そういった使い心地のいい街のダイナーでありたいというスタンスは、この先も変わらないと思います。

だからこそ、街の変化に合わせて営業スタイルは変えていっています。最近はこのあたりも住人が増えてきたので、そういったお客さんにも対応できるように、休業日だった日曜日のブランチ営業も始めました。何かを大きく変えたというわけではないですが、常にお客さんにとって使い勝手のいい場所でありたいということは考えています。

Sample detail2019年11月から始まったストーブの上で温めるアルマイト鍋。「寒い期間に少しでも地域の人たちに温まってもらえたら」というスタッフの発案で始まった。

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一方で、長くお店を維持するなかでどんなことに苦労されましたか?

 

フクモリを続けていくための組織や仕組みづくりには苦労しました。
過去にキッチンのリーダークラスのスタッフが辞めた時に、営業が立ち行かなくなってランチを一か月ほど休んだことがあるんです。当時はマスターシェフを置いていなかったので、飲食店で属人化しがちなレシピやオペレーションをそのタイミングで徹底的にマニュアル化するということが必要になりました。

たしかに、一般的に個店の飲食店ではオーナー自身も料理人というケースが多いですね。

 

フクモリはそうではないので、仕組みを作らないと続いていかなかった。だからといって完全にマニュアル化すると途端にお店の価値が失われていくところもあるので、僕たちは一店舗でやっているカフェのいい部分も残しながら、店内のオペレーションではできるだけシステマチックにできるようにしています。

そしてその効果を最大限発揮するために、飲食業のキャリアがある人間がきちんとオペレーションを組むということにしています。僕に飲食店経験がないぶん、これまで本当に手探りでしたが、そういった点をを大きく変えてからはものすごい楽になりましたね。

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響かせていく、フクモリのカタチ。

お店のコンセプトを貫き、お客さんのために改善を重ねながら苦労を乗り越えて来たとのことですが、10年続けてこられたのはなぜだと思われますか?

 

オープン当初はそこまで想像していませんでしたが、やっぱりフクモリを好きな人たちがどんどん増えてきたことが嬉しいですよね。
飲食店は、毎日繰り返していく日常がその形を形成していっているところがあるじゃないですか。「フクモリでランチを食べよう、一杯やろう、お弁当を買おう」って街の人たちがフクモリを目指して来てくれた10年の積み重ねで、それが一つのブランドになりつつある。そういうことも含めて、やっぱり好きでいてくれる人がたくさんいるから頑張れるというのはあります。

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まさに、街のダイナーという機能になってるのですね。

 

お客さんたちに怒られることもありますが(笑)
最初はコストのことを考えてランチは日替わりではなく週替わりにしていたんですが、「今日もアジかよ」って地元のおじさんに怒られたんですよ。そこで「毎日同じじゃダメなんだ」と気が付いて、肉と魚の二つを用意してそれで日替わりにしたんです。そこからは地獄の日々ですよね(笑)

なるほど(笑)お客さんと近いぶん、いろんな要望も多そうですね?

 

ありますよ。ただ、何に対してもパーフェクトなお店であれたらいいなとは思いますが、人それぞれの事情があってすべてに応えるのは難しいじゃないですか。ここを使い勝手がいいと思ってくれる人が来てくれればいいと考えているので、味やスタッフの対応などに関しては真摯に受け止めますが、怒られたことに対してすべて修正というよりは最大公約数ですね。

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でも、10年続けられたのはやっぱりスタッフとフクモリを支えてくれているお客さんのおかげです。お客さんがずっとフクモリを好きでいてくれたのはすごく大きいので本当に感謝しています。

飲食店にとって、街に愛され続けることはやっぱりひとつの理想形だと思います。最後に、次の10年を見据え今後はどのような展開をしていきたいとお考えですか?

 

最初に始めた時からお店を複数展開していくっていうイメージはないのですが、でも今ブランドとしては何かできることがあるんじゃないかとは思っています。
具体的には次の日本のことを考えていて、日本の一番のコンテンツって観光だと思っているんですよ。海外から見た時の日本のイメージって、いまだに「東京、富士山、京都、浅草」。だからこそ、山形をもうちょっと知ってもらってもいいんじゃないかと考えているので、その役割としてフクモリを海外に出せないかなって。

理想は、僕らが作ったフクモリっていうブランドを持って行って、日本と親和性のある国のオーナーがフクモリを展開すること。その土地のことは現地の人の方がよくわかっていると思うので、それぞれの国のオーナーに地元のネットワークで生産者を組織してもらうかたちで。その方が、“寄り添う”という意味でもフィットすると思うし、そんな風にフクモリを海外で響かせていけたらおもしろいんじゃないかなと考えています。それができたら、日本国内のいろんな場所でフクモリを出すより、1つの地域プロモーションのフォーマットになるような気がしていて。
そうやって「フクモリ」というブランドを守りながら、貢献できる領域を広げていけたらと思いますね。

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